2019年6月11日、第198回通常国会、参議院厚生労働員会(法案審査) で質問させていただきました。児童虐待防止に向けた政府の取組み、産後ケアの拡充、内閣府と警察における性暴力被害者への支援等について、根本匠厚生労働大臣、髙階恵美子厚生労働副大臣及び政府参考人に質問致しました。
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【議事録(ハイライト抜粋)】*議事録(自見はなこ分 全体抜粋)はこちら
○自見はなこ君 自民党の自見はなこです。本日もどうぞよろしくお願いいたします。 児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。 我が国の児童福祉法は昭和二十二年に制定され、七十年以上の月日を経て平成二十八年に大きく改正され、その際、第一条に、「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」と、子供の権利が、初めてと言っていいと思いますが、明確化をされました。このことは大変意義の深いことだということも繰り返しこの委員会でも申し述べさせていただきました。 そして、その平成二十八年の改正では、懲戒に関しては、親権者は、監護及び教育に必要な範囲を超えて児童を懲戒してはならないこと、児童相談所に児童福祉司、医師又は保健師、指導又は教育を担当する児童福祉司を置くこととともに、弁護士の配置又はこれに準ずる措置も行うことといたしました。また、子育てを母子保健の側面から支えるための子育て世代包括支援センターの全国的な展開、市区町村における子ども家庭総合支援拠点の整備や里親委託の促進に関しての取組など、大きな方向性も打ち出したというものでございました。 その後、この平成二十八年の改正を受けて、家庭裁判所が虐待を受けている児童などの保護者に対する指導の司法関与、家庭裁判所による一時保護の審査の導入、接近禁止命令を行うことのできる場合の拡大等の措置が平成二十九年に改正をされました。 厚生労働省では、平成二十九年八月に、新しい社会的養育ビジョンにより、家庭的な養育を第一原則として特別養子縁組の促進、里親委託率の向上などが打ち出され、平成三十年十二月には市町村・都道府県における子ども家庭相談支援体制の強化等に向けたワーキンググループが取りまとめられ、保護とそして支援の分化の必要性を始めとした児童相談所の目指すべき方向性について打ち出されたところでもございます。 我が国では、虐待死は平成二十八年度の死亡事例は六十七例、七十七名とされていますが、これらの取組がされているさなか、幾度もSOSサインを出しながらも我々で救うことのできなかった目黒区の結愛ちゃんの虐待死の事件が起こり、平成三十年七月には児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策、市区町村の体制強化と児童福祉司二千二十人の増員などを目標とする児童虐待防止対策体制総合強化プラン(新プラン)と言われておりますが、そして再びこの一月に大変残念ながら起こってしまいました野田市の虐待死の事件、こういうことも起こり、子供の安全を確認する緊急一斉点検もちょうど行われたところでありました。 以上が行政府の流れでございますが、ここ近年の児童虐待に対する政府の取組に関しては、我々側の超党派の議員活動の影響も大変大きかったものと思っております。ここに至るまで、元厚生労働大臣の塩崎恭久先生のお働きが大変大きかったことは誰もが知るところであります。塩崎先生が厚生労働大臣に、平成二十八年改正と新たな社会的養育ビジョンまで打ち出されまして、その後、大臣を終えられた後、一議員として、自民党の中において、私も事務局次長を拝命しております児童の養護と未来を考える議員連盟、これを結成をいたしました。また、この流れが大変大きく、そして加速してまいりましたので、超党派におきましても、児童虐待から子どもを守る議員の会、これを結成をいたしまして、併せてこれらの問題に超党派で熱心に取り組んでこられました。馳浩先生も児童虐待防止法の提出者の一人でもあり、その後も自民党の中で虐待等に関する特命委員会の委員長として活動を精力的に行ってきてくださいました。 一方で、我が国で虐待が全く取り上げられることのなかったであろう二十五年前から、小児科、そして産婦人科を始めとした医療従事者がまずは中心となって、多くの関係者を最終的には巻き込み、成育基本法の制定を打ち出しました。そして、二十五年間という長い月日が掛かりましたが、この二十五年間の活動を経て、医療、教育、福祉が一体的に連携し、子供の最善の利益のために妊娠期からの切れ目のない支援を我が国で実現することを目的としたこの成育基本法という議員立法は、昨年五月の超党派の議連を河村建夫先生を会長として立ち上がり、大変活発な与野党の議論の末に、昨年十二月、皆様のおかげで成立をいたし、一年をめどとして制定される予定で、現在、その準備段階にあるところであります。 以上が立法府とそして行政府の近年の動きを御紹介をいたしましたが、この間のそれぞれの議員や、また、行政の厚生労働省、都道府県、市区町村などの基礎自治体などの行政で精力的に変革に向けて努力をしてきてくださったそれぞれの立場の方々、加えて、医療の現場、母子保健の現場、保育の現場、教育の現場、地域での社会活動の現場など、それぞれの現場現場で大勢の関係者にも御尽力をいただいておりますことにも心から感謝申し上げたいと思います。特に、厚生労働省においては、社会情勢の変化に照らしてではありますが、法改正を含めて昭和二十二年以来の大きな変化に対しての御対応に心から敬意を表します。 この度の令和元年の今回の法改正では、児童の権利擁護、児童が意見を述べるアドボケートについて、児童相談所の体制強化、児童相談所の設置促進、関係機関の連携強化などを柱としての改正となります。 子供の命を守る、安全を守る、また健やかな成長、発達を育むことについて社会全体として取り組むに当たり、その活動に終わりはなく、その前進のさなかに起こる今回の札幌市のような新たな虐待死の事例に再び私たちは心が大きく痛み、そしてまた更なる取組を行うことが必要となりますが、それでも、私たちは心を一つに、子供の最善の利益のために我々ができることをより一層真摯に向き合う時期であるというふうに考えております。 そこで、一問目を厚生労働大臣にお伺いをさせていただきます。 本法案の意義、そして児童虐待の防止に向けた大臣の決意をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(根本匠君) 目黒区の結愛ちゃん、千葉県野田市の心愛さんのこの事案に続いて、北海道札幌市において、二歳の詩梨ちゃんが死亡し、実母と交際相手が傷害の疑いで逮捕された事案で、このような形でお亡くなりになられたことは誠に残念であり、心より御冥福をお祈り申し上げます。 児童虐待の対応においては、何よりも子供の命を守ることを最優先に取り組むことが必要だと考えています。何よりも社会の宝であり将来を担う子供の命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くし、児童虐待の根絶に向け、総力を尽くしていきたいと思います。 全ての子供の健やかな成長、発達や自立等が保障されるよう、児童虐待防止に関してはこれまでも、今委員から御紹介ありましたように、累次の対策、取組が行われてまいりました。やはり児童虐待防止に関しては、発生予防、早期発見、児童虐待発生時の迅速、的確な対応、被虐待児童への自立支援、これを切れ目なく一連の対策として講じていくことが重要だと思います。 この中で、特に虐待予防の観点からは、孤立しがちな子育て家庭を早期に発見し、支援につなげる必要があります。このため、妊娠期から必要な支援につなげられる体制を整備するため、幼児期から子育て期までの切れ目ない支援を行う子育て世代包括支援センターの設置促進。予期しない妊娠などで悩む妊婦に対し、産科への同行支援等によりその状況を確認し、関係機関につなぐ事業の実施。戸別訪問して家庭の相談支援を行うため、乳幼児家庭全戸訪問事業により、生後四か月までの乳児のいる全ての家庭を訪問し、養育環境等の把握の実施。これにより把握した保護者の養育を支援することが特に必要と判断される家庭に対し、養育支援訪問事業により、養育に関する相談支援や育児、家事援助の実施。行政サービス等につながっていない子供に支援を行き届かせるため、未就園の子供などを対象に、拡大した子供の状況把握。あるいは、相談窓口につながりやすくするため、いちはやくを周知するとともに、子育てに悩みを抱える人が適切に通告、相談できるよう、一八九のいちはやくの無料化に必要な予算の計上などなどの施策に取り組んでまいりました。 また、児童相談所の体制強化、関係機関との連携強化等を行うことにより児童虐待防止対策の強化を図るため、本法案を提出いたしました。 加えて、委員も熱心に取り組まれた成育基本法、これは昨年十二月に成立をいたしました。この成育基本法においても、成育過程にある者に対する虐待の予防及び早期発見に資するよう必要な対策、施策を講ずることとされております。この成育基本法に基づいて、関係省庁と連携して、成育医療等基本方針の策定などの取組を進める予定です。 本法案のみならず、このような取組によって、子育てなどに悩み孤立しがちな家庭を早期に発見し適切な支援につなげることで児童虐待の予防を図るとともに、子供の健全な心身を育成する社会をつくってまいりたいと思います。