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幼い命を守るために必要なチャイルド・デス・レビュー(CDR)

概 要

チャイルドデスレビューとは、「予防のための子どもの死亡検証」である。現在日本では子どもがどこで亡くなったかによって所管省庁、事故報告様式、検証のあり方も違う。2018年に成立した成育基本法にはじめてCDRが書き込まれ法的根拠の存在という大きな進歩があった。国はこの立法を受けて、全国の自治体でモデル事業を行い地域で関係者が情報連携を行い子どもの死亡検証体制が整うよう進めている。これまで縦割り行政の中で進まなかった連携を、2023年4月に設置が決まった「こども家庭庁」が主導して、次の事故や虐待の予防に社会全体で取り組んでいきたい。

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チャイルド・デス・レビューとは、子どもが死亡した時に、複数の機関や専門家(医療機関、警察など)が、子どもの既往歴、家族背景、死に至る直接の経緯などの情報を元に予防できる可能性の検証を行い、効果的な予防対策を導き出すことで、将来的に死亡率を可能な限り減らしていくシステムのことをいいます。

わが国の乳児死亡率、新生児死亡率、周産期死亡率は、戦後の経済発展とともに主要国の中でも最低レベルに到達しています。ですが、その一方で2005年の1~4歳児の死亡率が、他の先進国と比較しても高水準であるというレポートが発表されました。残念ながらその理由はまだ判明していません。

ソースをいくつか掲載致します。

https://hodanren.doc-net.or.jp/news/iryounews/050523syouni.html (全国保険医団体連合会サイトより)

https://www.niph.go.jp/journal/data/47-3/199847030003.pdf (国立保健医療科学インサイトより)

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkyuujigyou/dl/100514c_0002.pdf (厚労省サイトより)

2018年12月に議員立法として成立した「成育基本法」(成長過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律)では、チャイルド・デス・レビューが初めて法律の中に盛り込まれることになりました。その後、死因究明等推進基本法でもCDRについて書き込まれました。

※成育基本法:成長過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律

二つの立法を受けて、これまで内閣府だった所管が厚生労働省へと移り、死因究明等企画調査室が立ち上がり、体制としては整ってきています。厚生労働省は子どもの死因究明(Child Death Review)体制整備モデル事業を2020年度から全国7つの自治体で実施しました。地域で医療機関、保育・教育機関、その他の行政機関等で情報連携を行い、また収集したデータをもとに他機関検証委員会で子どもの死亡検証をします。2021年も引き続き、予算を増額し、参加自体体の数を増やし継続していきます。また2022年3月末には自治体むけの検証マニュアル整備も進められています

欧米では子どもの予防できる死亡を減らすため、主に不慮の事故や虐待等による子どもの死を防ぐことを目的としてチャイルド・デス・レビューを導入し、具体的な成果をあげています。先進諸国の中では、子どもの死因の全例検証が制度化されているところもありますが、わが国ではいまだ確立されていませんでした。

子どもの死というものは、大きくは、虐待、事故、病気ということに分けられます。その中でも、特に事故あるいは虐待ということであれば、社会全体として再発防止に資する施策議論をどのように行っていくのか、という観点からもチャイルド・デス・レビューは不可欠な制度だと思っています

仮に、虐待であれば、亡くなったお子さんがどういう状況であったのか、というところから、残されているその他のお子さんに対しての積極的に介入ができる可能性があります。あるいは、虐待の中で例えば、教育関係者の連携が悪い部分が見つかった場合には、そこに対してさらなる施策の改善を行うという働きかけも可能でしょう。

また事故の場合であれば、今後どうやって防ぐのか、というところについて、それぞれの予防に対する、具体的な予防策を国全体で、もう一歩、踏み込んでいこうという議論ができますので、チャイルド・デス・レビューが持つ意義というのは、極めて大きいと感じています。

具体的な制度を構築するには、まだ数年は要すると思いますが、法的な根拠ができたことは大きな前進といえます。さらには、刑事訴訟法との整合性も重要なテーマになっていきます。

刑事訴訟法第47条には、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない」と規定されています。ですが、但し書きの解釈・運用が担当官によって異なるため、虐待かどうかの見極めに支障が出ているケースもあります。

例えば、「事故」として扱われている案件について、小児科医が虐待を疑い情報を求めても、その情報が開示されない場合があります。ですが、チャイルド・デス・レビューが公益上必要と認められるようになり、捜査機関からも必要な情報が開示される動きが生まれれば、子どもの死亡率を最小化できるひとつのきっかけになることが期待できます。それに向け、論点整理を丁寧に進めていきたいと考えています。

2022年1月17日の参議院本会議では、岸田文雄総理大臣が施政方針演説で「こども政策を我が国社会のど真ん中に据えていくため、『こども家庭庁』を創設します。こども家庭庁が主導し、縦割り行政の中で進まなかった、教育や保育の現場で、性犯罪歴の証明を求める日本版DBS、こどもの死因究明、制度横断・年齢横断の教育・福祉・家庭を通じた、こどもデータ連携、地域における障害児への総合支援体制の構築を進めます」と強い決意をしましました。

この取り組みを、全国どこに住んでいても、虐待に関する知識の底上げをはかりつつ、子どもが亡くなったときにチャイルド・デス・レビューを実現できる体制構築のため、そして未来を支える子どもたちの大切な命を守るために、今できる一歩を踏み出します。

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関連資料

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​2022年1月17日 参議院本会議での施政方針演説

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